団地型中古マンションは、共同性への幻想とモダニズムをともなって、都市へ移入してきたニューファミリーの居住意識を満足させたといえる。一方、民間企業が分譲した中古マンションは、急速に進展してきた新しい都市経済を基盤にして、都市の匿名性に応えるものであったといってよい。昭和三九(一九六四)年に第一次中古マンションブームを迎えるが、昭和三〇年代半ばまでの中古マンションは、住居というよりむしろシティ・ホテル的な感覚で迎えられ、購入者は医師や弁護士、企業経営者など高収入を得ている人や、俳優など特殊な職業の人たちが多かった。これを原形として次第に一般に普及していったのである。中古マンション生活に対して今でもときどき使われる「カギ一つで便利」という言葉は、都市の匿名性が持っている共同性からの離脱志向をよく示している。昭和三〇年代の中古マンション草創期の居住意識の深層には、共同性への思いとともに、かつての家父長制を基盤とする家族制度、その集合としての村落共同体を解体していった個別化への志向がすでに秘められていたといってよいだろう。
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