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男の威厳はあなたの肩に

スーツの各部分のサイズについてお話しします。スーツのサイズを見る上で肩が入っている」という表現をすることがあります。これは肩幅がぴったり合っていて、袖山に余計なシワがなく、腕の丸みが袖の膨らみにきれいに包み込まれている状態を指します。袖がジャストフィットしたサイズだと、首の付け根から肩にかけて、上着の爪みを心地よく感じることができます。これが「肩が入っている」状態で、着心地は軽く感じられ、腕の動きもスムーズです。逆に肩の端に不自然な重みを感じる場合はサイズが今っていない可能性が高く、そのまま長時間着ていると疲札やすくなってしまいます。着ている自分自身のフィット感や動きやすさだけではなく、外見的にも肩のラインはとても重要です。肩のラインは、顔の一番近くに位侃するストレートなラインだけに、ここがビシッとしていれば信頼感や印象がアップします。また、洋服の構造からいっても、肩と袖をつなぐ「袖付け」はとても難しい部分なのです。きちんと袖付けされたスーツは、少し袖が前につけられていて、ハンガーに吊るされた状態でも袖が前に振れている形になっています。シワがなく適度なゆとりをもつように美しく縫製されたスーツは、スーツにそれほど詳しくない方が見ても、違いがわかるものです。

それなりのものを身に着けると素敵になる

何だかんだといったけれど、ダンガリーやコットンシャツは大好きなアイテムだった。ダンガリーシャツの下に黒のキャサリン・ハムネット(この人の名前を思い出すのに数十分かかった)のカットソースカート。白いたっぷりしたシャツにスリムジーンズ、そしてスニーカー。二〇代から三〇代という年頃にはお金のかからないカジュアルな服装で、それで充分おしゃれだった。シルクのシャツはジャブジャブとは洗えない。一日着るとクリーニングに、というくらい繊細な繊維だ。年齢と共におしゃれにはお金がかかってしまう。やれやれ、とそれなりのものを買い求めていくうちに、あの頃と比べものにならないくらいの金額を服飾費に使っていることになる。良質のものを見ると質を下げられなくなるし、またそれなりのものを身に着けると素敵になるのだ。

モダンな現代のボンド

現ボンド役のピアースーブロスナンのダブルの紺ブレは、スタイリッシュなカジュアル感を表現している。ローマのブリオーニが、彼のために特別に作った。歴代のボンドの服は、ロンドンのサヴィルーロウ製である。いちばん評判のよかったショーンーコネリーのブレザーは、高名な仕立屋アンソニアーシンクレアが手がけた。だから格好がよかった。ピアースーブロスナンは、英国諜報員なのに、なぜか英国に服を作らせず、イタリア製に頼った。イタリアでも英国でも、大変な話題になった。ジェームズ・ディーンのスタイルが話題になり、世界中にメイドインUSAが知られたのと同じ理由である。国ではなく、今はブランドがヒーローに自分たちの作ったものを着せることに熱心である。スタイリッシュなカジュアルは、モダンに通じる。だがその分、ボンドがモダンになった。新味が出たのである。ブロスナンはヨットの上で、ダブルの紺ブレの6つの金ボタンを外して身につけた。ネクタイはせず、濃いブルーのシャツを着ている。カジュアルそのものである。ブレザーのボタンが、ロジャー・ムーア同様、3つずつほぼ並行に並んでいるのだが、いちばん上に並んだボタンだけが、若干開きぎみだ。ブリオーニの得意のスタイルだ。やや開きぎみにするだけで、ブレザーの表情はがらりと変わる。カジュアルになるのだ。以上の映画制作年は、1962年の「ドクター・ノオ(007は殺しの番号)」から1995年の「ゴールデンーアイ」まで、33年間もある。似合う人、似合わない人はいたが、紺ブレのスタイルはほぼ変化がない。いや、その前の時代のフレッドーアステア(1899〜1987)や、ヘンリー・フォンダ(1905〜1982)から不変なのだ。紺のブレザーは半永久的である。自由で解放感があるからだ。だからカジュアルフライデイに向いている。もし私が、エブリデイカジュアルを強要されたら、シルク、麻、フランネル、カシミアの、シングルとダブルの上質な紺ブレにまず投資する。それ以外のものは必要ないからだ。1着20万として160万。四半世紀はもつ。きわめてカジュアルな考え方である。四半世紀のカジュアルフライデイのためのウェアは保証される。